佐太郎の小説、新シリーズ第5弾。


by tsado15
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「お前、花瓶の位置くらいで、何、モタモタしているんだ。モデルさん、待っているんだ。もっとてきぱきと動け!」
「で、で、でも、お、お、おれ、こ、こ、こ、この位置に、お、おくのは、お、お、お、おかしいと、おもいます」
「何言ってるか、わからねえよ。能書き、垂れる前に、まず吃音を直せよ」
普段は何でもないんだけれど、緊張すると、どもってしまう。いざというときに、オタオタして、物事が決められない。自分でも自信を失っている。

「言われたことだけをしっかりやれよ。自分の頭で考えようなんて10年、早いんだ」
「お前は指示されたことを迅速にかたづけられない。そんな奴、仕事の現場では、お荷物と言うんだ」
最悪の評価だ。自分でも情けなくなる。
リラックスしているときは何の兆しもない。でも、大事な場面で、心に魔法でもかけられたように、口が動かなくなってしまう。身体が動かなくなってしまう。
何か心因性の病気にでもかかっているのだろうか。


「カメアシなど掃いて捨てるほどいる。使い捨てライターと同じだ。役に立たなきゃ、すぐ首にする」と言い切る少し売れ出した傲慢なカメラマン。
求人誌でやっとみつけたアシスタントの仕事。荷物運びと使い走り。写真と関係のない仕事ばかり。学校に通っていたときのバイトとなんら変りない。果てはモデルになる女の軟派、調達まで言いつかる。ここまではいい。写真の仕事と考えられないことはない。

「おい、お前は、面がいいから、女がすぐ引っかかるんで役に立つ。セクシーなヤリマン女を探してこい。顔、スタイルは十人並みでいい。形だけの撮影はする。その後、ただでできる女。連れてこい。最近はヘルスへも行ってない。支払いに追われて金がないんだ」
堪忍袋の緒が切れた。
「安藤さん、この前、拾ってきたエステティシャンの専門学校生はどうしたんですか。顔が好みだとえらく気に入ってたじゃないですか」
「あいつはダメだ。貧乳でマグロのくせに、3回目から、金まで要求し出した。自分の身体を考えてもの言えってんだよんな」
「オマンコ、ただでできるから、つきあってやっていたのによ。あんなガリガリのしみったれ女、こちらからご免よ」
「援交女なら、いくらでもルートがあるっつうの。金さえあれば、若いピチピチギャルがいつでも抱けるわ」
「お前はハンサムだから得だよな。いい女とただでバンバンやれるんだろ。神様は不公平だ」

理論派で撮影の腕はいい。学ぶところも確かにある。が、モデルに平気で手を出す、女にだらしないカメラマン。この男の下で働いていることが恥ずかしくなった。
3週間で自分で見切りをつける。
自分は欠点だらけなのに、他人の欠点は我慢ができない。俺は短気で、結論をすぐ出してしまう。


俺は苛立っている。
自責の念を伴って、胸の奥の方でグツグツと煮えたぎっている、やり切れない思い。
俺の心を不法占拠し、足の指の間の歓迎せざる水虫のように、ジンワリジンワリと俺を実効支配する。その思いを消化できず、あえぎあえぎ息をついでいる。
沈着冷静で醒めた男を心がけてきた、かっこいい俺。どこかに消し飛んでしまっている。
今、俺は溺れかけている。

世の中が思い通りに動かない。
神様が俺に試練を与えている。と、いつものようにプラス思考で考えてはみる。でも、それだけ。願う方向に一歩たりとも動き出そうとしない。

写真専門学校は出たものの、写真関係のまっとうな仕事が見つからない。
フォトグラファー、フォトジャーナリストという言葉に憧れて、写真専門学校に入った。大学を出て普通のサラリーマンになる道を自分で絶った。自分なりに撮影には情熱を傾けてきたつもりだ。
できれば、大きな企業の広告宣伝の写真担当部署にスタッフとしてもぐりこみたかった。
学校で紹介された3流のフォト・スタジオのカメラマンアシスタントの仕事も、そこそこに名の売れたフォトグラファーと口論。わずか2か月で首になった。

いきなり撮影に入る。ほとんど休みが取れない。2週間でせいぜい1回。その休みも不定期。友達との予定など組めない。未だに徒弟制らしきものの残ってる前近代的な世界でもある。
ここまではいい。だが、よりによって、事務所の金の横領疑惑をかけられたのだ。生意気な俺を首にするためのフレームアップだったような気もする。
大人の世界は俺が思っている以上に汚い。

ケチなプライドを捨てられない。「孤高に生きる」という俺の人生のスタンスが邪魔をする。
おかしいと思っても自分の意見を封じ込め、上に立つ者の機嫌をとりながら言う通りに動くことができない。社会人失格だと自分でも思う。やっぱり俺は世間を舐めているのか。

忍耐不足で世間知らずと言われてしまえばそれまで。が、写真の仕事だけは俺の聖域。
安易な妥協はしたくない。
夢を細々と紡ぐことさえできれば、労働条件などにこだわらない。薄給でもいい。

稼がなければ生活できない。
コンビニの深夜の仕事にやむなくに戻った。
事態は何も打開できない。八方塞がりの状況。焦りと空虚感が胸の中を渦巻く。
そして、心の拠り所にしていた香織にまで裏切られたのだ。

「香織、お前、援助交際しているんだってな」
「いきなり何よ!」
「不潔だ。いつからなんだ」
「翔太に関係ないでしょ!」
「関係、大ありだろ。俺はお前が好きだ。恋人のつもりでいる。そうじゃないのか?」
「そのつもりよ。私も、翔太が好きよ。でも、翔太に私を束縛する権利はないわ。あたし、翔太の所有物じゃないのよ。結婚しているわけでもないから不倫にもならないよね。二人が魅かれあっているだけで、今はいいんじゃないの。時々セックスして楽しい時間を共有できれば、それでいいんじゃないの。他の時間はそれぞれの可能性を求めて自由にやろうよ。若いんだからさ。私がスタイリスト、目指しているの知ってるでしょ」
「ざけんな。俺、お前が他の男と抱き合っていると思うと、胸の中がかきむしられるような気持ちになるんだ。何にも手につかない。俺が他の女とセックスやってもかまわないんか?」
「ぜ~んぜん。翔太の自由でしょ」
「ふ~ん。そんなもんなのか。それじゃあ、恋人と言えないだろ。俺、おまえが、わからなくなってきた」

「翔太って、性道徳なんていう胡散臭い観念にとらわれているんだ。貞淑とか純潔とかいう社会のお仕着せを大切に思っているんだ」
「んじゃあ、悪いんか?」
「人、好き好きよね。あたし、他人の価値観にあれこれ言わないわ。でも、それをあたしに押し付けないでよ。あたしにはあたしなりの考え方、生き方があるんだから。夢もあるんだから」

「援助交際して得た金を何に使っている?」
「ほとんど、お洒落に使っているわよ。悪い?」
「服や靴を買うために、知らない男と寝るんか? お前、やっぱり不潔だ」
「翔太には、流行に流され易い、私のような軽い女の子の気持ちがわからないのよ。あたし、高校の友達と同じような洒落た服や靴が欲しいだけなの。あのくだらない女達が手に入る物が私の手には入らない。そう思うと、悔しくて悔しくて、いらだちがメラメラ燃え上がるの。そうなったら、もう駄目。焼け付くように欲しくなる。我慢できないのよ。どんな手段を使っても手に入れるわ。万引きをしてでも、身体を売ってでも」
「以前、万引きして捕まったの。そうして、そこの売り場主任の中年男にネチっこく責められた。ホテルに一緒に行ってやっと許してもらったわ。でも、ラッキーだった。女の主任だったら、両親や学校に通報されてたわ。懲りたわ。だから、始めっから身体で稼いで欲しい物を買うことにしたの」
「最低だな」
「でも、その売り場主任、私の若い身体が忘れられないらしくて、その後、お金を払って私とセックスするようになったのよ。私の常連客第一号。お金に余裕ができたら、今でも電話してくるわ」
「世の中には、女に見向きもされない奴もたくさんいるからな」
「君と過ごす2時間が私の今の人生の生きがいだって、涙を流さんばかりに言うのよ。援交を不道徳で汚い行為と人は言うけど、人助けの一面だってあるのよ。あたしみたいな甘ちゃんでも他人のために生きることができるんだって、自信持ったわよ」
「ものは考えようだってわけか」
「そして、いろいろとアドバイスしてくれるの。それも、親や学校と全く違う観点からの助言よ。かえって、現実の社会に役に立つの。援交ってそんなに悪くないなって思うようになったわ」
「ふ~ん」
「私、我慢できない、ふしだらな女よ。軽蔑してもいいわ。翔太、そういう私が、嫌いなら、別れましょう」
「嫌いになりたいよ。でも、それができないんだ。だから、つらいんだ」



香織とは飯田橋のマンションの同じ階に住んでいた幼馴染。香織の2歳違いの兄貴とずっと同級生で、近くの極真空手の道場にも一緒に通っていた。二人ともほぼ同じ時期に黒帯を取得。親同士も親しく、当然のように、お互いの部屋を自由に行き来していた。

「お前とは、子供のころからの長い付き合いだ。お前の良さを誰よりもよく知っている」
「あたしも、翔太のこと、理解しているつもりよ」
「おばさんやおじさんに申し訳ないと思わないのか?」
「少しはね。でも、両親は世間体で私をあの高校に入れたのよ。お陰でえらく迷惑しているんだから。私はよいお嫁さんなんかに金輪際なる気はないのにな」
「香織がそんな玉じゃないのは認めるよ」
「私の家、平凡なサラリーマンでしょ。けして裕福じゃないわ。惨めな思いをしているのは私なのよ。私も体裁を気にして洋服や靴を欲しがって何がいけないの。自分で稼いで好きな物を買って何がいけないのよ」
「そう言われると、強く反論はできないな」
「翔太や兄貴と同じ公立の高校へ行けばよかったわ」
「学校の問題じゃないような気がするけどな」
「じゃあ、私の持っている資質の問題だって言いたいの?」
「そう、香織は虚栄心の強い、欲望に弱い女」
「そんな女を、翔太、好きになったのよ。そちらの方が問題だな」

「お前の高校、お堅いミッション系だろ。売春はキリスト教の教義に反しないのか?」
「私、キリスト教なんか信じていないもの。宗教の時間はいつも居眠りよ」
「だろうな」
「裕福な家と貧乏な家の格差、不平等については、キリスト教、現状を肯定するだけよ。何もしてくれないわ。だから、私は自力でその不平等を是正しているだけよ。それが教義に反すると言われても、何さって、感じよ」
「援交、学校にバレたら退学だろ」
「そうよ。だからなんなのさ。あんな学校、自主退学したいくらいなのに」


香織が中学3年になるまでは女性と意識したことがなかった。妹のような存在だった。
兄貴と同じ部屋を使っていた。新体操の部活から帰ると、翔太がいるのを気にもせず、汗まみれのトレーナーを脱ぎ捨てた。ブラジャーとパンティ1枚の姿になって、風呂場に駆け込もうとする。
「香織、俺は慣れてるからいいけどよ。翔太のことを少しは考えろ。お前の発育のいい身体を見ていると、俺でもムラっとくることがある。翔太は若い男だぞ」
とたんに、香織の顔が、いや、身体全体が真っ赤になった。俺の顔も熱くなっていた。
それから、しばらくの間は、お互いの顔を、まともに見ることができなかった。
香織のことが好きなんだとぼんやり意識し始めていた。香織も同じだったようだ。

香織、高1の夏。神宮外苑の花火大会に、俺と兄貴と香織と香織の友達の美咲の4人で出かけた。
全員浴衣姿。絵画館前の広場で、皆で夜店をひやかし馬鹿を言いながら、大空に乱れ咲く花火を見上げていた。花火の大音響のたびに、当時の兄貴の恋人の美咲はキャアキャア言いながら兄貴に抱きついていた。が、香織は俺の腕に控えめに手をまわすくらいだった。そのうち、二人は暗闇に紛れてどこかに消えてしまった。
取り残された俺と香織。最初は間が持てず、ぎこちなかった。俺が意を決して香織の手を握ると香織が握り返してきた。
「兄貴達、どこにいったのかなあ」
「どこかでキスをしているんだよ。兄貴、今夜こそばっちり決めてやると息巻いていたから」
「ばっちり決めてやるって、どういうこと?」
「セックスするってことだろ」
「いやらしい!」
「いやらしくないだろう。男と女、好きになったらキスをする。キスをしたらセックスをするっていうのが自然の流れってもんだ」
「ねえ、最近、翔太のこと、妙に意識しちゃって、なんでもないときに考えていたりするの。これって、翔太のこと、好きになったのかな?」
「そうだとうれしいな。香織。俺も一緒なんだ。なんでもないときに、香織のあのブラジャーとパンティ姿、目の前にちらつくんだよ」
「バカ!」
「でも、香織のことがどんどん好きになっていく。自分でも分るんだ」
「あたしも、翔太のこと好きになっちゃたみたい」
「香織、男と女がお互いに好きになったら、どんな流れになるんだっけ?」
「翔太、あたしたちも、第1段階のキスとやら、実験してみるか」
「香織、異議な~し!」

握り合っていた手がじっとりと汗をかいていた。
空には花火がきらびやかに咲きほこり乱れ散っている。
木の下の薄暗がりに移動。お互い向かい合って抱き合って見つめ合う。香織の顔の上を様々の彩りの光が輝いていく。ひたむきに見つめてくる香織が美しいと思った。可愛いと思ったことはあるが、始めて美しいと感じた。大人の女になった香織に感動。
浴衣の下からの香織の肌のぬくもりと弾力が伝わってくる。香織の首筋あたりから成熟した女の匂いが魅惑的に立ち上ってくる。本能的にオスとメス。
俺は香織の腰をきつく引き寄せ、香織は俺の首に手を回す。熱い熱い抱擁。口の中を、舌と舌が行き来し、からみあう。至福と恍惚の時間に我を忘れる。
花火大会終了のアナウンスで時間の経過を知る。

「香織、キスがこんなおいしくて、こんなに夢中にさせるものだと知らなかった」
「あたし、うっとりしちゃって、本当に夢でもみているようだったわ」

それから、毎晩、時間と場所をメールでやり取りしてむさぼるようにキスをする間柄なった。
2週間後には、翔太の母親がパートに出ている隙を狙って翔太の部屋でセックスをするようにもなっていた。
夏休みの終わりには、自他が認める恋人同士が誕生していた。
二人の人生で最高に幸せな時期の一つとなった。



「売春って、犯罪だぞ」
「そんなこと、翔太に言われなくてもわかっているわよ。でも、売春防止法という法律で禁止されているだけで、罰則はないのよ」
「ふ~ん、そうなのか」
「バレなきゃ良いのよ。どんなに取り締まっても、売春は根絶することなどできやしないわ。いつの時代にもどこの国でも形を変えて生き残ってきているんだから。それくらいのこと、翔太にだってわかっているでしょ」
「まあな」
「性を売って何が悪いの? マッサージと一緒。サービス業よ。おいしいお食事と飲み物を提供するのとどこが違うのよ」
「おおいに違うよ。法律という社会の決め事は守らなければならないんだ。売春は社会の善良な風俗を乱し、社会の基盤を危うくするじゃないのか?」
「翔太。本気で、そう思っているの? 信じられない。戦争中の従軍慰安婦、米軍基地近くの歓楽街の売春婦。国家も御都合主義よね」
「それに、売春婦って、最古の職業の一つなのよ」
「・・・・・」


「わかったわ。援助交際、止めはできないかもしれないけど控えるわ。最小限度にする。私、翔太が好きだし、これからも翔太とずっと付き合っていきたいもの」
「俺もお前とずっと付き合っていきたい」
「翔太、この頃、なんだか変だぞ。焦っているみたい。今夜は、優しくしてあげる。コンビニ弁当、買って、マユミのアパートに行きましょう。マユミ、今晩、帰らないって。お酒を少し飲みながら、DVDの新作、見ながら、明日の朝まで仲好くしましょう。遠慮なく大声を上げて、セックス、楽しみましょう。気分を晴らして、明日から元気だそうぜ」

やっぱり、香織は俺の恋人だ。特効薬だ。
一晩中、語り合って。やりまくって。また頑張ってみようという気持ちになった。
香織が大好きなのは変わりない。
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# by tsado15 | 2013-06-22 17:45 | 翔太・暗中模索・
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渋谷コミュニテイカフェ「アフロディティ」の女性席。早い話が出会い喫茶よ。
マユミと二人で話していると、マジックミラー越しに男性客から品定めされているという意識も薄れ、緊張もほとんど感じなくなるわ。あたし、肩を大きく出したキャミソール姿。ヌーブラで胸の割れ目を強調。ピンクのショーツが見えるか見えないかの脱色したデニムの超ミニスカートで、ドキドキ感を演出。渋谷ギャル風の濃い化粧。すぐできる軽い女を伝達。
露出度の高い服装と厚い化粧は現役高校生のカモフラージュよ。たとえ、知り合いに見られても、普段の清楚な装いをしている私とは気づかないはず。甘いかな。

私、この服装と化粧で、わざとぞんざいにギャル語を使うのよ。で、始めはすれっからしのヤリマン女に見られるわ。でも、やった後の私の素顔と受け答えのまともさにびっくりする客も多いのよ。その落差振りが受けるみたい。制服姿の君ともう一度、会いたいと言われることも多いの。もちろん、それはすべてお断り。でも、どうしてもと泣きつかれて諭吉20枚を弾んでくれるというお客と他の高校の友達の制服を借りて会ったことはあるわ。男って、女子高生の制服に弱いのよね。

「初めての客を厳選するのは当たり前だけど、2度目以降はもっと慎重に選ばないとね」
「金のないリーマンは、いくらハンサムでもパスね」
「香織、客が後をつけていないか、注意するのよ」
「この前なんか、別れたばかりの男が、隣の車両に乗っているんで、びっくりしたわ。すぐ電車から下りて、タクシー、使ったわ」
「香織みたいな可愛い子は、お金はかかるけど、タクシーを使うのが安全よね。自分の身は自分で守る。これ、援交女の鉄則なんだから」

「香織、昨日の最後の客と出て行った後、どうした?」
「定番メニューよ。食事に行って、カラオケに行って、それから、ホテルでウリよ」
「何をやってる人だった?」
「30代の自営業者みたい。あんまり遊び慣れていなかったし金払いも良いし。やばい業界の人の匂いもしなかったわ。良いカモになりそうな感じ。たっぷり甘えて、メールも教えておいたわ」
「さすがね。香織、羨ましいわ。美人だし、ボディはいいし。リピーター率、すごく高いもんな。筋の良い常連客、ゲットするのうまいものな」
「あたしって、純情ぶったカマトト女なんだよね。時々、自分でも嫌になるわ」
「普段の香織を見ていると、援助交際しているなんて、考えられないもの」
「あたしはあたしなりに努力しているのよ。男が歓ぶように、男がまたあたしと逢いたくなるようにふるまっているのよ。セックスも、相手の希望を読んで頑張っているわ」
「香織は本当に客筋が良いんだよな。あたしなんか、貧乏くさいのばっかし。昨日なんかも、ずーとやってなくて溜まっていたのか、3発もやられちゃった。疲れたのなんのって。2時間の制限時間内なら何発やってもいいってことにしてあるから仕方ないけど。でも、4発目やろうとしたとき、さすが切れたわ。やるんだったら、割増料金よと言ったら、しょんぼりしてやめたわ。可哀そうなことしたかな」
「マユミは優しいんだから。お客に甘く見られるのよ。あたし、2発以降は泣きそうな顔して、マグロを決め込むわ。疲れてもうできないわ。やるんだったら、勝手に出してねって」
「あたし、貪欲だから、自分も楽しまないと気がすまないの。それに、客を顔で選ぶ傾向あるし。もうちょっと、商売に徹しなくちゃいけないのわかっているんだけど・・・。性分なのよね」



私、両親と進路のことで大喧嘩して、今、マユミのアパートに転がり込んでいるの。翔太もよく立ち寄るので、3人で同棲状態になっているわ。マユミ、翔太のことが好きみたい。翔太が泊まっても何にも言わないんだもの。

「ねえ、ねえ、翔太って、本当に腹が立つのよ。裸になって、私がいくら誘っても、俺は商売女とは寝ないって、言うのよ」
「私にも、そう言うわ。結局、寝るんだけどね」
「『翔太からはお金をとらないわよ』と言ったら『そんな問題じゃない』と言って、眼の前でマスターベーションするのよ。癪だったら、ありゃしないわよ。仕方がないから、私も隣りでマスっちゃった。不思議よねえ。本番するよりかえって刺激的だった。人間の感情って、理解しがたいところあるのね」
「それでも、腹立ちがおさまらないから、私とやりたがっていた男に電話して部屋にきてもらい、翔太の寝ている隣りで一発やってやったわよ。私、大声上げて、よがってやったわ。でも、男は駄目ねえ。隣りに別の男がいると、気にしちゃって。1回しかできないのよ。早々と帰っちゃった」
「翔太、会えば、援交、そろそろ止めて普通のバイトをしろって、うるさいのよ」
「そうか。それで、この頃、香織との間、ギクシャクしているのね」
「普通のバイトじゃ、アメリカの学費、全く稼げないわよ」


「翔太、今朝、キスしてくれたのよ。優しく抱き寄せて私の中に入れてくれたのよ。寝起きの一発よ。私、有頂天になっちゃった。でも、ピーンと来たわ。ねえ、何があったの?」
「私が他の男とやるのが嫌なら、翔太も他の女とやればいいんじゃない、と言っただけよ」
「そうか、やっぱし翔太の香織へのあてつけだったのね。可愛そうなあたし。当て馬ってわけか。それでもいいわ。私、翔太、好きになっちゃったんだもん」
「だと思ってた。全然構わないわよ」
「無理して言っているように聞こえるんだけどな。でも、香織にも責任があるんだぞ。隣りで、ブチュブチュ、ギコギコ、夜中、翔太とやり出すんだもの。好きな男が他の女とやるの許せないわよ。嫉妬で胸が苦しくなるわ」
「マユミでもやっぱりそうなの」
「今度、香織の目の前で、翔太とセックスしちゃおうかな」
「無理、無理、無理。翔太、あれで、妙に潔癖なんだから」
「3人でやっちゃおうか」
「絶対、無理。そんなこと、言ったら、翔太、怒り出すぞ」


「私ね、小林の持ってきた話、乗っちゃたのよ」
「ああ、あの愛人バンクの話?」
「そうそう」
「小林の奴、私には、その話、持ってこないんだよな。女を選んでやがる。癪だなあ」
「それで、昨日、相手の男の人に会ったの」
「どうだった?」
「それがねえ。70歳近くの老人なのよ」
「グェ~、不潔!」
「そう、私も最初はそんな反応だったわ。でも、会ってみると、小柄の可愛いお爺ちゃんだったの」
「ふ~ん」
「私、お爺ちゃんっ子だったでしょ。3年前、亡くなったお爺ちゃんのこと、思い出しちゃってさ。そのうちに抵抗感、無くなったのよ」
「加齢臭なんか、ないの?」
「私、お爺ちゃんの匂い、好きだったもの。それに、今度のお爺ちゃん、ダンディで、オーデコロンなんかつけているのよ」

「隠遁しているけど、不動産会社の参与なんだって。私をすごく気に入っちゃたみたいで。結局、好条件で愛人契約を結んだわ。小林さん、その辺はずる賢いのよ」
「私、全額、アメリカで学ぶための資金にするわ。ファッション・デザイン、向こうで本格的に勉強してみたいの」
「アメリカの学校の支払い期日、迫ってるのよ。ここんとこ、無理して最後の荒稼ぎよ。その後は、援交の方、続けるけど、もう新しい客はとらないわ。お爺ちゃん、資金援助してくださるみたいなの。時々、アメリカに行くから、そのとき、世話をしてくれって言われちゃった」
「香織、すっかり気に入られちゃったのね。理想的な援助交際ね」


「それがねえ、その老人の方も、私と同年齢の孫娘を亡くしたばかりだったの。すっごく可愛がっていたみたいよ。私、その孫娘の代替品なのよ。時々、私のこと、マキと呼んでしまって、照れ笑いしているのよ」
「お爺ちゃんにとって、私、孫娘のダミーのときと、年若い愛人のときがあるの。うまく使い分けてるわ」
「孫娘のときは、ひたすら甘えれば喜ぶのよ。欲しいものは何でも買ってくれる」
「凄い! 羨ましい!」
「とうとう、若い女の子とのデート用だけのために、代々木に洒落たマンションまで借りたのよ。掃除をして綺麗にしておくという条件で、私、自由に使っていいことになっているの。他の女の子を連れてくるときは、外に出ることになっているけど、最近は一緒に楽しんじゃうことも多いわ。この世界の人脈が広まったわよ」
「ところが、お爺ちゃん、女の子を連れてくることも滅多になくなったの。香織と二人でいるのが一番落ち着くんだって。だから、代々木のマンション、私専用になっちゃた。というか、私、お爺ちゃんの愛人みたいな存在になっちゃった。だから、翔太と言えども、男は絶対に入れないわ。それが仁義だわよね。だから、翔太、今まで通り、マユミのところで面倒見て。自分のものにしても文句言わないから。今度、マユミは遊びにきてよね」



「週2度のセックス付きデートが契約だったのよ。でも、もうホテルになんかいかないわ。代々木のマンションでしか、セックスしないもの。それも気の向いたときよ。だから。契約自体が意味のないもになってるわ」
「68歳なんだけれども、あっちの方は元気そのもの。週2回なら、きっちりこなすの。バイアグラも使わないわ。歳の功なのか、私を喜ばす術を知っているの。若い自分勝手な男なんかよりよっぽどいいわ」
「マユミ、老人のセックス、馬鹿にできないわよ」
「ふ~ん、香織、すっかりお爺ちゃん贔屓になっちゃったんだ。私は絶対に若い方がいいけどな」

「おちんちんは、使わなければ、駄目になっちゃうんだって。死ぬ直前まで、身体が動く間は、セックスにチャレンジするそうよ。凄い気力なの」
「俺はどうしようもない好き者なんだと冗談めかして言うけれど、セックスがちゃんとできてるときは他の面でも充実するんだって」
「私、お爺ちゃん、見ていると、ちょっとの困難で、自分の夢をあきらめかけていた自分が恥ずかしくなったわ」
「私、まだ何もやってない。それなのに挫折しようとしていたわ。今は、負けるものかって、気力が沸いてきているわ。それだけでも、お爺ちゃんと出遭ったことに感謝している」

「お洒落な装いをするのも、ファッションの大事な勉強だといって、お爺ちゃん、私の欲しい服や靴、どんどん買ってくれるのよ」
「香織、最近、センスのいい高そうなもの、身につけているもんな。女ぶりが3割くらい上がっているよな」
「お爺ちゃん、新しいもの、買ってくると、何度も何度も私に着せたり脱がせたりポーズを取らせたりして、じっと眺め入って喜んでくれるのよ。私、お爺ちゃんの着せ替え人形になって、一緒に楽しむの。アドバイスもくれるわ。それが実に適格で参考になるのよ」
「先が長くないから、美しいものを眼に焼き付けておきたいんだって」

「最近は、週4、5回は抱きあっているわ。さすがに立ったり立たなかったりだけど」
「立たないときは、私の身体、ただ触っているだけで、ただ舐めているだけで、ただ匂いを嗅いでいるだけで、幸せなんだって。どうしても立たせたいときはバイアグラを使うことももちろんあるわ。でも、それは、お爺ちゃんの主義に反するんだって」
「元気のないときは、優しくフェラをしてあげるの。それでも駄目なときは、ローションを塗った手で根気よくしごいてやるわ」
「『香織、いい。香織、いい』、『香織、盛り上がってきた。もう少しだ』、『脚がつっぱってきた。来るぞ。来るぞ』と、だんだん声が大ききくなるのよ。それで、出るときは『いった!』よ。すごい声を上げるの」
「終わった後、『香織、有難う、香織、有難う』って、何度も言うのよ。次はもっと頑張ろうって、気になるわ」

「お爺ちゃんが来たら、まず一緒にお風呂に入って、身体中、丁寧に洗ってあげるの」
「身体に少しシミが出てき始めているけど、筋肉はまだ逞しいのよ。最後は、仁王立ちになってもらって、おちんちんと袋を特別丁寧に洗ってあげるの。すっごく喜ぶのよ。そのまま、フェラをすることもあるわ」

「それから、デパ地下やコンビニで買ってきた、出来合いのものをテーブル一杯に並べるわ」
「お爺ちゃん、食べながら、私の身体を触るのが好きなの。だから、食卓では、私、いつも丸裸なのよ。おかしいかなあ」
「固いものは口移しで食べさせろって、せがむの。私、何度も何度も噛んで、唾液でグチャグチャにしてから、お爺ちゃんの口の中に流し込んでやるのよ。それも、おいしい、おいしいって、眼を細めて喜ぶのよ」
「でも、セックスの予定があるときはお酒は飲まないわ」
「お酒を飲むのはセックスしてから、出し終えてからって、決めているみたいなの」
「出した後のビールが最高においしいんだって」



「小林って、何歳なのかな?」
「40歳を超えたばかりみたいよ。男盛り、やり盛りって、威張っていたもの」
「やくざなのかな?」
「墨は入れてないけど、暴力団の準構成員みたいよ」
「なんだか、怖いわ」
「愛人バンクの客、後4、5人紹介するから、心の準備をしておけだって」
「香織を愛人バンクの中核に育てて自由に使おうしているんじゃないかな」
「私、これ以上、お客、取る気は全くないんだけどな。その上、空いてる時間は自分のファッションヘルスで働けって強要するのよ」
「自分の女にしようとしているんじゃないの? やばいわよ」

「お爺ちゃんと、週4、5回、やってるなんて、小林には、もちろん、内緒よ。金銭的にも精神的にも、それ以上のものをお爺ちゃんから戴いているんだから」
「私、もう愛人バンク、止めたいの。小林と手を切りたいわ」
「俺から逃げようなんて考えたら、学校にも両親にも報告して、お前の人生、メチャメチャにしてやるって脅すのよ。やっぱり、やくざの端くれね。マユミ、悩んじゃうわ。どうすればいい?」
「ずばり言うと、小林を殺してしまうほか、ないな」
「やるわ。大きな夢のためになら、やるわ。何でもやるわ。マユミ、手伝って」
「香織、本当に本気よね。なら、もちろん、手伝う」


私は、不退転の決意で、小林を強く見つめ言い放った。
「私、愛人バンク、もう止めます」
「お前、自分の立場、よく考えろよ。止めるんなら止めろや。そんときは、前、言ったように、お前の過去を、あらいざらい、学校と両親にバラすからな」
「そう言うと、思ってました。いいです。後には引きません。学校は辞めます。両親と絶縁します。覚悟しています。でも、そのときは、そのときで、警察に駆け込んで、小林さんのこと、全部、お話します」
「香織、お前、根性のある、本当に気の強い女やな。この話は、とりあえず、棚上げにしておこう。双方に得になるような、解決の道を探っていこうや。ただし。俺がやくざだってこと、忘れんとけよ」





            ・・・・・・・・★3・・・・・・・・
「香織、お前、今度は高級デートクラブで働いているんだってな。で、そこで知り合った爺いの愛人になったんだって?」
「何で知ってるの? マユミね。あいつ、おしゃべりなんだから」
「最近は、マユミと仲が良いんだぜ。優しくしてやると、いろいろ話してくれる」
「優しくしてやるって、セックスもやってるの?」
「お前、他の女とやってもいいって言ったじゃないか。だから、お前の一番仲の良いマユミとやっただけだ」
「翔太って、最低の男ね」

「相手はどんな男なんだ?」
「マンションを3棟所有しているそうよ。お金には余裕があるみたい。自称遊び人の68歳。不動産会社経営していたけど、今は息子にまかせて、時々顔を出すだけでいいんだって」
「そうか、爺さんとセックスして、金をもらっているんか」
「そうよ。私の身体を大切に大切に扱ってくれるわ。いろんなことも教えてくれるわ」
「それは、それは、結構なことで」
「愛人といっても、半年契約で、週2のデートよ。若い子と違って、とても優しいの。体力的にも疲れない。おねだりすれば、たいていのものを買ってくれるわ。高級なレストランにも連れていってくれるの」
「いい気なもんだ」

「私の夢の実現のため。今、お金が必要なのよ」
「アメリカ留学の資金をどうしても作りたいの。両親に頼んでも、そんな余裕も必要性もないって、けんもほろろ。高校と同系列の短大に行けだって」
「あたし、もう両親の言いなりならないことにしたの。自分の未来は自分で切り開くわよ」
「学校の友達、皆、ヨーロッパやアメリカに留学するのよ。私だって行きたいわ」

「翔太、私の夢はスタイリストになること。何度も言ったわよね」
「日本のファッションデザインの学校で地道に努力していくことも考えたわ。でも、それよりも、先に、英語を自由に駆使できるようになる道を選びたいの。その過程で、向こうのファッションデザインを、ある程度ものにできればいいかなと思っているんだ。そして、日本とアメリカのファッションデザインを比較できる眼を養えられれば最高ね」
「それくらい力をつけてから、日本で、本格的にスタイリストの道を学ぶわよ。とにかく食べていけるようになるまでに時間がかかるのはわかっているわ。それが今決めている、私の人生のスケジュール」
「そうか、香織、頑張れよ。その頃、俺もフォトグラファーとして、格好ついていれば、いいんだけどな」


「香織、お前は嘘つきだ! マユミの話だと、援交の方、全然、減らしていないそうじゃないか。このところ、最後の荒稼ぎだとかなんとか理由をつけて、積極的に稼いでいるそうじゃないか。俺との約束どうなった?」
「約束なんかしていないわよ。内澤さんに面倒みていただくようになってから、本当に少しずつ減らしてきたわ。でも、向こうの学校の授業料払い込みが迫っていたの。このところ、ちょっと、頑張らなければならなかっただけよ」
「とにかくお前が信じられなくなった。俺はお前が許せない!」

怒りのため、頭に血が上り、正常な判断ができなかった。
気が付いたら、香織の顔を平手で殴り、倒れた身体を蹴っていた。
耐えていた暴力行使の堰が切れた。手加減はしていたが、顔を覆ってうずくまる香織を何度も何度も蹴っていた。極真の男がすることか。恥ずかしい。
香織、一時的に左耳が難聴。左足を軽く引きずるようになっていた。全治2週間。二人の間に亀裂が入ったとしても、おかしくない状況。

「マユミ、俺って、最低の男だ。カッとなって香織に暴力を奮った。怪我を負わせてしまった。もう、香織とは終わりだ」
「でも、その香織を病院まで運んだのも翔太なんでしょ」
「冷静になったら、とんでもないことをしてしまったと気づいた。あわてて香織を抱いてタクシーに乗っていた」
「香織、わかっているわよ」

「マユミ、俺、写真の仕事がうまくいかず、イライラしていたんだ。精神的にずっとおかしかった。いい機会だ。しばらく、写真から離れようと思っている」
「それはいいかもしんないね。あたしも描けなくなったときは、絵と全く関係ない仕事にうちこんだもの。おミズの仕事していると、そのうち、また猛烈に描きたくなるのよ」
「俺、ナマっている身体を苛めたくなってよ。何か肉体労働をしようと探してみたんだ」
「写真と全く違ったものがいいよね」
「求人誌で、ちょっと興味のある、面白そうな仕事みつけて、早速、面接へ行ってきた。明日から来てくれ、だってよ。社長、極真やってた人だったんよ」
「で、どんな仕事?」
「屋根の上に太陽エネルギー発電のパネルを設置する仕事。高いところに上るんよ」
「それ、いいわね。環境に優しい仕事とも言えるものね。かっこいい!」
「だな。人間関係の煩わしさもあまりなさそうだし。俺にも優しい仕事になりそうな気がするんよ。高いところに上ると、たぶん下界がせせこましく見えるんじゃ、ないかな」
「下界なんて、言える高さなの? おおげさなんだから」

「俺、香織とはもうやってけない。別れることにした。で、香織にメッセージを残したい。でも、俺、手紙を書くなんて、柄じゃあ、ないんだよなあ」
「いいわよ。伝えてあげる。要旨を言ってごらん」
「香織、本当にすまないことをした。恥ずかしくて顔も合わせられない。お前はそうじゃないだろうけど、俺は今でも愛している。アメリカでファッションの勉強。頑張ってな。俺、しばらく写真から離れる。けど、必ず写真の仕事に戻るから。香織に負けないように、自分の道に精進して自立するから」
「オーケー。伝える。涙ながらに語ったなんて、脚色、入れておこうか」
「アホ!」



翔太にも、香織にも、人生の転機が訪れた。
翔太は、写真の一時断念。香織との別離。
すべてをご破算にして、新しい自分に生まれ変わって生きていくつもりになっていた。
 
香織を信じてやることができなかった。変に潔癖な道徳観から香織を許せず、精神的に溝を作り、破局を招いてしまった。愛するって、信じることのような気がしている。この辺りについてもう一度、考える必要があるな。
香織を心の拠り所としている限り、飛躍的な1歩が踏み出せない。香織からの離脱、そこから、新しい展開が見えてくるんじゃないかな。

香織も香織で悩んでいた。夢をかなえる方策と金策に閉ざされ、弱気になっていた。が、執拗にからんでくる小林との競合の中で、持ち前の負けん気が復活。夢をつかみとる強い決意が芽生えてきていた。

翔太を愛してはいる。でも、愛にかまけていては、夢をかなえられないのも事実よね。誰も助けてなんかくれないわ。夢は自分で切り開いていくものなのね。
小林なんかを、恐れてビビっているようじゃ、私の夢の実現なんかできやしない。ここからまず逃げ出すわ。アメリカ極秘渡航を決めたの。マユミと翔太しか知らないわ。私の革命はそこから始まるんだわ。
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# by tsado15 | 2013-06-22 17:43 | 翔太・暗中模索・
             ・・・・・・・・★4・・・・・・・・
「ボウヤでないところ、見せてやる」
俺は独りごとをつぶやいて、気合を入れた。
俺が旅立つ前に、香織を自由にしてやりたい。アメリカへ夢の第一歩を心おきなく踏み出させてやりたい。
極真空手で鍛えた根性。伊達でないところを見せてやる。


六本木のオープンテラスのレストラン。
食事を摂っている小林に近づいた。試合に臨むときの緊張感。
「小林さんですか。俺、翔太と言います。少し、お話があるんですが、いいですか」
「おお、何だ」
「俺の友達の香織を脅すのもうやめていただけませんか」
「カオリって、どのカオリや。援助交際、やってる、ショウベン臭いガキのカオリか?」
「俺、香織の友達です」
「ほおう。連れ込みで、ときどきカオリと乳くりあっているガキはテメエか」
「香織、あなたにつきまとわれて、迷惑しています。止めていただけませんか」
「何だとお。俺は金を払って、遊んでいるんだ。それをつきまとうだと? ざけんな。お前、金払ってないから、最近、やらせてもらえないんだろ。そんなこと、知るか。忙しいんだ。消えな」
「香織の話だと、ヘルスの仕事をするように、脅迫しているとか・・」
「なんだと、てめえ。脅迫だと。言っていいことと、悪いことがあるんだ。脅迫って犯罪やろう。俺が罪を犯しているというんか。犯罪を犯しているんのは香織の方やろ。売春という名のな」
「未成年の女を買うのも犯罪だと思いますが・・・」
「兄ちゃん、ナマ、言うんじゃないの。俺を誰か、知って口聞いているんだな」
いきなり鼻梁を目掛けて、ストレートパンチがとんできた。この程度をよけるのは造作もなかった。反射的に身体が動く。
「てめえ、少しはできるんだ」

「おい、このガキ、ちょっと叩きのめして、その辺に捨てておけや」
近くで食事をしていた数人の屈強な男に囲まれる。小柄な男が不用意に殴りかかってきたので、腹部に蹴りを入れる。腹を抱えて倒れこみ、苦しんでいる。
「小林さん、こいつ、思った以上に手強いです。ナイフ、使っていいですか」
「昼日中だ。ここじゃ、まずい。誰か、こいつの動きを止めろ」

後ろから近づいてきた、プロレスラーのように身体の大きな男につかまり、羽交い絞めにされる。
「しっかり押さえておけ。にいちゃん、香織のことはもうあきらめな」
今度はよけることができず、小林のパンチをまともに受けた。ぐしゃっと、音がしたような気がする。顔に手をやると真っ赤に手が染まる。

大きな男からすり抜け、顔面に正拳、股間に蹴りを入れる。隙をみて逃げ出す。

少し鼻がまがっただけですんだ。
仕事へも休まずいった。
顔面の腫れは、練習でへまをやったと言うだけで通った。

身体の傷は、思ったよりは軽く済んだ。が、心の傷はいっそう深くなっている。
落としまえをつけなければ、男が廃る。このまま逃げていては、俺自身の未来に展望が開けない気がした。負け犬人生がずっと続くような気がした。
まずい。このままこじゃ、まずい。



深夜。青山の駐車場。
表通りから2本入った通りに面している。人の通りがほとんどない。時折、酔ったグループが声高に話して通っていく。冷え込んでいる。吐く息が白く感じる。

六本木ドンキ・ホーテで購入したスパナを握り締め、車体ををめちゃめちゃに傷つけガラスを粉々に打ち砕こうと小林のベンツに忍び寄った。

先客がいる。黒い車体に黄色いスプレーで落書きしている女がいる。
「女を食い物にしている人でなし。この男に強姦されたの。天誅!」
女を押さえつけ、脚を強引に開いてそそり立つものをねじ込もうとしている男の絵。

マユミだ。うまい。さすが美大生。
「マユミ、何、している?」
ビクっとして、手が止まる。震えながら、こちらの顔を凝視する。
「誰なの?」
「俺だよ」
「なんだ、翔太か」
「あたし、この男にタダでやられたの。それだけなら、まだ許すわ。でも、その後、私を子分達に順番に回させたの。そして、それを見ながら、卑猥な冗談を言って笑っていたのよ」
「警察沙汰にすることも考えた。けど、私にも、身体を売った身という弱みがあるわ。自分流の復讐をしているところよ」
「相手は多分ヤクザだぞ。怖くないのか?」
「やられたら、やり返す。これ、あたしの哲学、あたしの流儀なの」
「お前、強い女なんだな。やったのが、すぐお前だって、ばれるぞ」
「わかってるわよ。そんなこと。しばらく東京を離れるわ。千葉の鴨川の作業場の方でしばらく制作に没頭しようと思ってる。そこは誰も知らないわ。翔太こそ、何しにきたの?」
「俺、この男に鼻を曲げられたろ。その仕返しさ。俺もやっぱり、やられたらやりかえす主義なんだ。というより、自分に対するけじめ、をつけにきたんさ」
「翔太もそうなんだ」
「なんの反撃も加えず、すごすご引き下がってきた自分が惨めでたまらなかった。香織は電話に出ないし、仕事も決まらないし、くさくさしていた。このままじゃあ、負け犬になってしまう気がしたんだ。自分の人生は自分で打開しなくちゃ、いけないんだよな。とにかく、何かせずにはいられないんだよ。このスパナでこの車、ぶち壊そうと思っている」
「共同作業ね。存分にやって。でも、見つかったら、ただですまされないわよ」
「わかっている。この前は何の心構えもなくやられたしまった。今日はやったら逃げるのみ。しばらく沖縄の海にでも行っている。その後は、カメラ片手に世界を貧乏旅行でもするつもりでいる。日本脱出のきっかけが欲しかった。自分の旅立ちのささやかな祝宴さ」
「あたしも、しばらく東南アジアのどこかの秘境ででも、暮らそうかと思っているんだ」


ベンツは、修理に出さなければ使用不能な程度に傷つけた。
共通の思い、共同の作業は、人の心を結びつける。
俺とマユミ、香織を介して構築されていた危うい友情が、二人の間の強固な友情に変化した気がした。友情の新しい段階に入ったようだ。

夜明けの外堀沿いのまだ薄暗い土手道。朝靄が立ち込めている。下の堀から爽やかな風が吹いてくる。早朝ランナーが駆け抜ける以外は、全く人が通らない。中央線の一番電車が通った。

185センチの俺と150センチに足りないマユミ。身長差35センチ。手をつないで歩いていると、大人と子供の散歩。少し滑稽かも。時々、俺が身をかがめ、マユミがつま先立ちし俺の首にぶら下がってキスをする。心もすっかりうち溶けている。
「あたし、朝、こんな晴れやかな気持ちで散歩したの久しぶりよ」
「俺もだな」

やりたい気持ちにせかされて、二人、マユミのアパートに転がるようにして戻る。
マユミを始めて心から抱きたい、味わいたいと思った。
「マユミ、今日は香織のことをすっかり忘れてお前を抱く。変な打算で抱いていたこともあった。ごめんな」
「うれしいわ。翔太。私も包みかくしのないありのままの私を表現するわ。抱いて」
「マユミ、おまえは小柄でだけど、弾力があって、ピチピチしていて、抱き心地がいい。香織と違った良さがある」
「それに、私のオマンコ、男の人には気持ちのいい造りになっているみたい。皆、言うのよ」
「締めがきつくて、確かに、最高に気持ちがいい。すぐ昇天してしまいそうになる」
「今朝は何度も、何度も昇天してよ」

「私、感度がいいのよ。凄い声を上げるから驚かないでよ」
「それは、検証済み」
「身長差があるから、翔太が上だと窮屈かな。私が上になって自由に動いた方がいいわね」
「じゃあ、3回目からはそうしてくれ」

マユミのことが好きになったようだ。でも、香織に対するものとは、かなり違っている。香織に感じるのは切なくなるような愛情。マユミには愛情というよりも友情に近い感情。





              ・・・・・・・・★5・・・・・・・・
青山キラー通りの小林のマンション。
あたし、屈強な男二人に後ろ手を捻じられて連れてこられたの。

翔太と昼過ぎまで、体力の続く限りギコギコやってたわ。お互いの身体の隅々まで堪能しちゃった。というより、あたしが翔太の僻地をくまなく探検して廻ったのかな。あたし、うれしくてうれしくてずっと涙を流していたわ。
翔太が帰った後、身の回りの品をまとめて鴨川の作業所に行き、一晩、死んだように眠ったわ。でも、どうしても手放したくない絵が数点あって、今朝、アパートへのこのこ取りに戻っちゃった。そこで、張ってた小林の手下に捕まったの。誰かに頼めばよかったんだわ。油断しちゃった。

「お前、昨日の昼前、俺がとっちめた、空手をやっているガキとセックス、パコパコやってたそうじゃないか。あのガキ、香織だけじゃなく、お前とも、やっているのか」
「すんでのところで、逃げられるところだった。俺は執念深いのが取り柄よ」
「これ、お前の絵だな。お前がアパートから運び出そうとしていたものだ。こんな絵にこだわるから捕まるんだ。危なかった。俺、絵のことはよくわからない。が、よく描けているんじゃないの。悪いけどよ。こうさせてもらうわ」
小林、恍惚とした表情で、マユミの絵画に白、赤、黄色のスプレーを吹き付ける。たたきこわす。蹴り飛ばす。
「おめえ、何でこんなこと、されるか、わかっているよな」
「俺に逆らうなんて、たいした度胸だ。まずは褒めてやるぜ。やられたら、2倍、3倍にしてやり返す。これ、俺の流儀よ。おまえ、俺の大切な車をスプレーで汚し、メチャメチャ傷つけた。まず、お前の大切なものに同じことをしてやっただけよ」
「まだ、汚したりない。お前の身体も汚してやるな。さんざんいたぶって、犯してやるぜ」
「俺がお前を犯すわけじゃあない。だいたい、チビで、チンクシャ面のお前は俺の好みじゃねえ。確かに身体はいい。もうさんざんにもて遊んでやったしな。今さら、やる気はしねえわな。それに、援交で大勢の男を渡り歩いてきたお前を犯しても俺の身体の方が穢れるってもんだ。お前にふさわしい相手、探しておいたで」
「男だったら、足腰が立たないようにたたきのめしてやる。お前、女だから、違った形でお仕置きをしてやるからな」
「傑作でよう。ヘルスで働くことを渋っていたのによう。香織、こいつらに回させると言ったら、言うこと、素直に聞いたぜ」


「こいつらなあ、墨田川の河川敷で浮浪者しているんだ。何やって食っているかわからない。いつも暇そうにしている、得体の知れない奴等なんだ。たぶん、皆、叩けば埃の出る身よ。俺、必要なとき、時々、手伝ってもらってんだ」
「おい、皆、入れよ」
5人の汗じみた汚い服装の男達があたしを取り囲んだの。
「小林さん、いつも、いつも、すいません。この娘っこ、本当にいただいちゃっていいんですね」
「ああ、いいよ。この女、俺に不義理をしたんよ。皆して、回して、たっぷり味わいな」
「ウオォ~ワ、若いし、いい身体しているな。オマンコに入れるの、久しぶりだ。ご相伴に預かりま~す」
「騒ぐようなら、殴ってもいい。さるぐつわしてガンガンやれよ。ただ殺しはするなよ」
「本当に、生でやってもいいんですんね」
「もちろん、かまわない。あきるまで可愛がってやんな。酒と食べ物は近くのコンビニで自分達で買ってこい。朝までじっくり楽しみな」
「俺も、他の女のところで、朝までグイグイやってくる。8時までに、掃除してひきあげとけや」


まず、二人が、暴れ動くあたしの身体を押さえつけたわ。
残りの二人。あたしの衣服を剥ぎ取り、あたしの脚を1本ずつ押さえ、股を強引に開いたの。
「ひゃあ、ピンク色の割れ目が眩し~い。本当に入れちゃっていいのかよ」
最後の一人がパンツを脱いだ。黒っぽい肉塊がもう屹立している。
「オネエチャン、悪いけどよ。皆で回させてもらうわ。俺、ネエチャンみたいな若いピチピチした女とずっとやっていねえんだ。ドキドキするわ。チンコ、ビンビンだな」
「ウワァ~ン、ウワァ~ン、コンドーム、使ってよう! 私のバッグにたくさん入っているから。ウワァ~ン、私の身体に生で出したら、ウワァ~ン、舌を噛み切ってやっからな。ウワァ~ン、ウワァ~ン」
咄嗟に、子供みたいな大泣きを演じたわ。男達が躊躇するのがわかった。もう一押しね。
「ウワァ~ン、ウワァ~ン コンドーム、使ったら、ずっと気持ちのいい思いをさせてやっからよう。ウワァ~ン、ウワァ~ン キスもしてやっからよう。ウワァ~ン」
あきらかに、男達の動揺が広がったわ。
「おいおい、なんだか、俺、無理やり、生で、やるの、嫌になってきた」
「おい、ハンドバッグにコンドーム、たくさん、入ってるぞ。このネエチャン、売春婦、やってんじゃないの。下手したら、俺らの方が、病気移されるぞ」
「俺、病気は懲りているんだ。一応、コンドーム、使うわ」

あたしの中にズブリと入れたの。「痛い!」と叫ぶ用意をしていたのに、全然、痛くないの。十分に濡れていたみたい。それどころか、快感が脳天を貫いたの。ゾクっとして震えちゃったわ。私って異常なのかな?

「おい、このネエチャン、腰を使っているぞ。感じてやがる」
「泣き叫んでいるけど、この調子は歓んでいるみたいだな」
「もう押さえる必要はないみたいだな。おい、そろそろ。代われよ」

私、オジサン達に代わる代わるに入れられているうちに、感じてきちゃったの。後半は大声をあげていたみたい。あたしって、感覚が普通からずれているみたい。昔からよく言われたわ。
このオジサン達、ちょっと汚いけれど、援交の延長と思えばなんでもなかったわ。

私、不潔な女なの。制作中は何日もお風呂に入らないわ。パンティーも1週間くらい取り換えないこと、しょっちゅうなのよ。あそこの辺りが痒くなってきてから換えていたわ。
だから、オジサン達にも、香織のような抵抗感、ほとんどなかったのよ。


高校時代、クラスの女の子とは、ほとんど口をきかなかったわ。皆が私を無視していたというより、私が皆を無視していたの。友達は男の子だけ。それも、セックス・フレンド。わりと、気軽にセックスの相手してしてあげたから、一部の男の子達には、絶大な人気はあったわ。

汗臭い男の子が特に好きだった。調子に乗って、練習を終えたばかりのサッカー部員7人を相手に、部室で、順番にセックスさせたことがあったわ。輪姦と変わらない状況だったけど、私の中では遊んであげたという感覚だったのよ。
だから、汚いおじさん達に回され始めたときもパニックには全然ならなかったの。


クラスの男の子によく言われたわ。
「マユミ、お前、すっごく匂うぞ。その女の臭さがたまらなくて、あっという間に、勃起してしまうんだ」
「勉強もできるし絵もうまいし、お前、風呂さえ入れば、言うことなしの女なんだけどな。でも、せんずりをかくとき、何故かお前の匂いを思い出しちゃうんだ」
「お前の匂いに慣れちゃうと、無臭の女がなんだか物足りなくなってしまうから、不思議だよな」
やりたがってた男の子達、結構、あたしの臭さに好意的だったのよ。


「俺達に快楽を与えてくれたネエチャンに感謝だな。ネエチャンの締まりは最高だった。あれはオマンコの女神だったんじゃないか。そんな気がするんだ」
「ネエチャンのオマンコ、ピンク色できれいだったな。おいしかったな。今でも夢に出てくるわ」
「俺、先はあまり長くない。いい冥土の土産になった」
「500円払ってやった、隣りの小屋のトメ婆さんのドドメ色のシワクチャオマンコじゃ、あの世にいっても、思い出したくもないもんな」
「ネエチャン、俺達を対等の人間として扱ってくれたよな。その慈悲の心に感激した」
「最初は嫌がっていたのに、最後は声をあげてよがっていたのには驚いたな。やっぱり、人間じゃ、なかったような気がする」
「ネエチャンのつけてくれた爪痕、うずくんよ。このうずきがなくならないでほしいなあ。夢じゃなかったことの証明だもんな」


あのオジサン達、少しも汚くは思わなかったわ。本当に汚いのは小林のような、心が臭い人間よ。
臭さって、人間の個性のような気がするんだ。あたしはあたしの臭さを撒き散らすことを厭わないわ。臭くない、無臭の女なんて、個性のない、つまらない女よ。
でも、最近は香織に言われて、前よりはお風呂に入るようになったのよ。香織には嫌われたくないもの。
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# by tsado15 | 2013-06-22 17:41 | 翔太・暗中模索・
              ・・・・・・・・★6・・・・・・・・
あたし、執念深い女なの。
小林に対する殺意は引き返せないところまで来ていたわ。小林を生かしておくことなど、もう女のプライドが許さない。必ずこの手で地獄に送ってやる。それも芸術的完全犯罪で。だって、私はアーティストよ。
小林を恐怖のどん底に突き落とし、後悔の中でこの世から跡形もなく抹殺してやるわ。

香織は自分で小林を殺す気になっているけれど、殺すのは私よ。だって、小林殺害は、私の作品だもの。
大きな白いカンバスを目の前にしたときの、武者震いを感じるの。創作意欲がフツフツと湧いてきているみたい。素晴らしい大作に仕上げてやるわ。

小林がいたのでは、スムーズにアメリカで勉学できるかどうかわからない香織はもちろんのこと、小林に恨みを抱いている翔太も手伝ってくれるはず。嫌とはいわせない。必ず手伝わせるわ。

人を殺すという絆で結ばれれば、3人は同志よ。精神的運命共同体になるわ。お互いに裏切れない特別の関係を築くことになる。ゾクゾクするわ。だって、あたし、香織も翔太も大好きなんだもの。

昔、易者に言われたの。天涯孤独の相があるって。あたし自身が納得していたわ。だって、あたしって、偏屈で協調性がなく、周りの皆から毛嫌いされていたもの。でも、香織と翔太はごく自然にあたしを受け入れてくれた。二人には規格外れのあたしを容認できるキャパシテイがあるみたい。私を理解してくれる生涯の親友になってほしいのよ。

私が主犯よ。犯罪が破綻したときは、私一人が罪をかぶって自ら命を絶ち切るまでよ。
二人に迷惑はかけないわ。覚悟はできている。

小林を油断させるには、香織の力はどうしても必要。
死体処理を円滑に運ぶには、翔太の力が必要。


「もしも~し、小林さん、私」
「私じゃ、分からねえよ。誰だ?」
「私。香織よ」
「おお、香織か。なんだ」
「小林さん、一度、代々木のマンションに来たいと言っていたわよね。今夜なら、大丈夫。内澤老人、お孫さんが小学入学とかで、福岡に行っているの。3日ほど、帰らないって。でも、駐車場、使えないから。タクシーで来て。部屋は805号室だから」
「おお、そうか。じゃあ、2時間くらいしたら、行く。今夜は久しぶりしっぽり濡れようぜ」
「でも、マユミも来ることになっているの」
「マユミか。あんまり会いたくないな」
「マユミにひどいことしたんだってね」
「なあに、自業自得ってことよ」
「もう仲直りしてよ。その意味もこめて、マユミも加えて3Pしようよ」
「マユミなんかとやりたくないよ。まだ、あいつのこと、許したわけじゃない」
「マユミ、すっかり反省して落ち込んでいるのよ」
「そうか。エスエム3Pっていう手もあるな。俺と香織でマユミを苛めるという3Pだ。それでも、いいか?」
「あまり気がすすまないな。けっど、それでもいっか。マユミって、結構なマゾなのよ。苛め甲斐があってよ」


上機嫌で小林が部屋に入ってきたわ。
 (このところ、何をやってもうまくいく。俺の事業の才も相当なものだな。愛人バンクも軌道に乗ってきた。ファッションヘルスは場所がいい。なんとか目処がついた。女の子採用にあたっての味見にもあきてきた。誰とやっても、あんまりかわり映えがしないものな。ここらあたりで、身近に、一人、信用できる女が欲しい。香織はいい。容姿も文句ないが、教養もある。さすが、お嬢さん学校に通っているだけのことはある。が、何にも増して、あの気の強い性格に惹かれる。俺の女にしようか。子供を作るのも悪くないな)

「大人の玩具の店で、鞭、手錠、ロウソクを買ってきた。SMの道具だ。今日はやる気だぜ。サディストの本領発揮や」
「小林さん、マユミ、今、料理作っているわ。小林さんの、男としての大きさを理解できず、とんでもないことをしたと、殊勝に反省しているわ」
「俺の偉大さがやっとわかったか。けど、許しはしないぞ。今夜は徹底的に苛めるからな」

「マユミ。お前、一昨日の午前中、香織のダチの空手のガキとオマンコしていたろう。アパートを見にいった俺の手下が、部屋から漏れてくるお前の大きなよがり声を聞いたとよ。その後、ガキが部屋からげっそりとした顔で出てきたそうだ。香織の男も男だけど、お前は共同便所みたいな女だな。誰にでも見境いなくやらせる。友達の男にでも、平気でやらせる。そんな裏切り者の汚らしいお前に今夜は鉄の制裁を加えてやるからな。覚悟しろ」
あたし、下を向いて、じっとしていたわ。今は我慢、我慢。後で。必ずお前をこの手でしとめてやる。

「今夜は3Pを愉しむぞ。3Pでも普通の3Pじゃあ、面白くもなんともない。SM3Pという趣向でいくぞ」
「マユミ、まず服を脱げや」
「よ~し、最初は。尻たたきだ。マユミ、そこにしゃがんで、おまんこが見えるくらい尻を上げろ」
あたし、言う通りにしたわ。小林、あたしのお尻を開いて、ジロジロ見ながら匂いを嗅いだのよ。
「ほほう、これが友達の男を平気で盗む女の尻か、肌がブツブツ荒れていて汚いなあ」
「なんだか臭い匂いまで漂ってくる」
「ごめんなさい。あたし、今、ウンチしたばかりなの」
「糞! 気分が悪くなった」
小林、怒りで顔を赤くして、あたしの上にまたがり、手加減せず、思いっきり尻をビシビシ叩き始めたわ。
「昔、悪いことをしたら、母親に尻、叩かれて折檻されたもんだ。お前、なんで、叩かれているか、わかるよな」
「はい、小林さん。反省しています。今までのこと、許してください」
小林、さらに、ビシビシ、ビシビシ、渾身の力で叩いてきたわ。痛くて痛くて気が遠くなりそうになった。でも、なんだか変。あたしの身体の中を電流が走り抜けたの。ものすごい快感。ぶたれるってこんなに気持ちのいいものだったのかしら。新発見よ。新しい楽しみをみつけたわ。

「ハハハ、尻が真っ赤だ。腫れてきた。ざまあみろ。う~ん、気分がいい。乗ってきたぞ」
「ア~ン、ア~ン、痛いわぁ、いいわぁ、ア~ン、ア~ン、いいわぁ、いいわぁ、アァ~ン」
あたし、多分、うっとりした表情になっていたんだろうな。本当に快感の波が身体の中を駆け巡ったの。
「チッ、お前、本当にマゾなんだ。ちょっとしらけるな」
「ア~ン、ア~ン、もっとお、もっとお、ぶって。アァ~ン、激しく、ぶって。お願い」
「お前の出っ尻は敲きがいはある。でも、何だかまた匂うぞ。興奮して漏らしていないよな」
あたし、それどころじゃなかったわ。自覚はなかったけど、漏らしちゃったのかな。

「香織、そこにビニールシートを敷け。次はローソク攻めだ」
「マユミ、その上に横たわれ」
「香織、ローソクに火をつけろ。まず、お前が裏切り女を折檻しろ」
香織が控えめに私の背中と尻に赤いローソクの蝋を垂らしてきたの。ちょっと、腹を立てていたのかもしれないわ。
熱いのなんのって、頭の中が真っ白になったの。熱さって、皮膚じゃなくて、頭で感じるものなのね。息が止まるほど熱いの。でも、同時に、最高に気持ちがいいの。あたし、泣き叫んでいたみたい。
「熱い! 熱い! ギャ~、ギャ~、熱い! ギャ~、熱い!」
小林があたしの身体を裏返し、蝋をあたしの乳房に、下腹部に大量に垂らしたみたい。
「熱い! 熱い! ギャ~、ギャ~、死ぬ! ギャ~、熱い! 死ぬ!」
股を開いて割れ目にも、顔にも、サデスティックに垂らしてきたわ。私、もう気が狂いそうだった。
「アァ~、熱い! 熱い! いいわぁ、いいわぁ、熱い! アァ~」
「熱い! 熱い! ギャ~、ギャ~、殺して。殺して。殺してよう!」
本当に気が狂っていたのかもしれないわ。

ビニールシートの上でぐったりしている蝋だらけの私。蝋がそこら中に飛び散っていたわ。息を整えていると、小林が、靴底で、あたしの乳房、性器を踏みつけ、ゴリゴリしごいてきたの。尻や横腹を蹴ってもきたわ。
「おら、おら、マユミ。てめえは、誰とでも寝る糞女だ。浮浪者に回されたゴミ女だ」
「痛い! 痛い! アァ~、いいわぁ、いいわぁ、アァ~」
あたしの髪を持って顔を引き上げる。唾を吐きかけてきたわ。もう、痛さも何も感じなかったわ。
「マユミ、手をそこについて、顔をこちらに向けて口を開けろ」
あたしが言われる通りにすると、あたし顔に向けて放尿してきたの。私、口を大きく開けて液体を受けたわ。口の中に溜まったオシッコ、ゴクゴク飲んじゃった。でも、小林の小便だと思うと、かえってゾクゾクしたの。あたしって、本当にマゾなんだ。
「アァ~ン、アァ~ン、いいわぁ、いいわぁ」
「お前の乱れよう、凄い。感動ものだぞ。マゾ女としてお前をキープするのもいいかもな」
「てめえは、公衆便所みたいな女でなく、今は公衆便所そのものだ。傑作だ。ガッハッハ」

「ああ、すっきりした。香織、お前も小便やってみろ。爽快だぞ」
「私、やっぱり、サドの趣味はないみたい。でも、すっごく興奮しちゃった。小林さんとセックスやりたくなってきたわ」
「そうか」


二人、ベッド脇のソファーに座って濃厚なキスをしている。雰囲気を盛り上げるため、あたし、部屋の照明を暗くしたわ。
「後は、俺と香織だけで二人の世界を愉しむ。マユミ、もう、お前はいらない。キッチンで鼻糞ほじって、オマンコかいて、屁でもこいてろ」
「嫌だあ。小林さん、ちょっと、下品よ。今夜はロマンチックにいきたいわ」
「悪かった。ついつい、普段の口調が出ちゃった。気をつける」
「マユミ、新宿のカウンターバーでバーテンダーしていたことがあるの。だから、カクテル作り、うまいのよ。今夜は、バンバン、セックスしながら、グイグイ、カクテル飲んじゃうわ」

「マユミ、私に、口当たりのいいブルー・マルガリータを一杯、作ってくれない」
「ブルー・マルガリータって、テキーラベースなのよ。カクテルらしいカクテル。私、大好きなの。小林さん、知ってる?」
「知らないな。カクテルはほとんど飲まないんだ。女の飲み物だろ」
「あら、小林さん、カクテルに偏見持ってるんだ。いけてないなあ。オシャレな女の子に馬鹿にされるわよ。広い意味じゃ、チュウハイだって、ミックスジュースだって、カクテルよ。カクテルって、奥が深いのよ。私なんて、まだまだ初心者よ」
「そうか、マユミ、俺にも、そのブルー・ナントカを、一杯、作れ」
ベースのテキーラに睡眠薬をたっぷり溶かしておいたわ。
睡眠薬の澱粉質は下に沈めて入らないようにして、気づかれないよう細心の注意を払ったわ。

「乾杯! 小林さん」
「乾杯! 香織」
「ブルー・マルガリータって、なんだかロマンチックな気分になっちゃうわね。海辺にやって来た恋人同士の雰囲気よね。潮騒が聞こえてくるようだわ」
「うん、なかなかいけてる味だ。透き通るような青がいいな。周りの塩もいい」

「おいしかった。小林さん、そろそろベッドに入りましょう。マルガリータの力を借りて、グイグイ動かして。私をいかせてね。お願い!」
香織ったら、小林のチンチンをさすりまがら、耳元に息を吐きかけて囁いている。香織のあんなしどけない姿、始めてみたわ。香織、気合が入っているな。

「まかせておけって。俺、今夜は張り切っちゃって、さっき、バイアグラ、飲んできたんだ」
「うわぁお~! 期待しちゃうわ」
香織、乗せるのがうまいなあ。自分の身体に乗せるって意味じゃなく、雰囲気に乗せるって意味よ。でも、この際、たいして変わりがないか。

「今夜はまずテキーラベースで攻めてみようかな。マユミ、他に何が作れる?」
「そうね、ラ・ルメールとかピカドールとか」
「じゃあ、その2杯、お願い」
「マユミ、俺もだ」
両方とも強いカクテルよ。飲め、飲め、小林。

「フ~、小林さん、最高だった。もう少しでいくところだったわ」
「そうか、なかなか激しかったろ」
「カクテル、飲みながらのセックスって、なかなかお洒落よね」
「そうだな。いいもんだな」


「マユミ、次、スクリュードライバー、作って」
「俺もだ」
やはり、ベースのウオッカには睡眠薬がたっぷり溶けているわ。
「あら、バイちゃん、効いてきたみたい。小林さんの息子さん、ずいぶん立派になってるわ」
「そうか」
「スクリュードライバー、飲んだら、激しく動いてね。名前の通り、私にねじこんでね」
「よっしゃ、ねじこんだる。でも、俺、もういきそうなんだよ」
「小林さん、出してもいいのよ。私、今日、安全日なんだ。一緒にいきましょ」
「じゃあ、遠慮なく出すぞ」

「ウワァ! ウワァ! ウワァ! いいわ。いいわ。いく! いく! いくぅ!」
「香織! 俺も、いくぅ!」
香織のやつ、演技派だなあ。翔太のときでも、そんな大声、出さないだろ。

「小林さん、私、いっちゃった。好きよ。好きよ」
「俺もいっちゃった。好きな女に出すと、気分も最高だ」

「香織、このまま中出しをずっと続けないか。俺達の子供、作らないか?」
「えぇ? うれしい! 小林さん、私のこと、そんな風に思っているんだ。泣けてきそう。好きよ。好きよ」
「香織、スクリュードライバー、もう1杯」
「俺もだ」

香織ったら、ここぞとばかり、フェラをし始めたわ。小林のペニスについていた精液をベロベロ舐めて拭き取りながら、愛おしげに小林に視線を送っていたのよ。香織のあの目線を受けたら、男は皆イチコロよ。
「香織、俺、お前を大切にする。お金には不自由させない。籍を入れてもいいんだぞ」
「本気なの。うれしいわ。涙が出てくるわ。でも、少しだけ考えさせて」
「わかった」

「小林さん、そそり立って赤黒く輝いている。凄い! 逞しい! バイアグラの威力って、馬鹿にできないのね」
「ウオォ~、燃えてきたぞ!」
「キャー、またまたいかせて!」

「マユミ、マンハッタン1杯」
「俺もだ」

「凄い! 凄い! 凄い! ウワァ! ウワァ! ウワァ! 死ぬ! 死ぬ! 死ぬぅ!」
「香織! 俺も、いったぁ!」
「身体中が痺れているわ。少し休ませて。アァ~」
「俺はチンポの周りが麻痺している。ウゥ~」


「3発も、出すと、ちょっと疲れてきたな。眠くなってきた」
「小林さん、眠っちゃ、嫌。もっと愉しみたいわ。できることなら、永遠にやり続けたいわ。今度は、私が上よ。騎乗位で激しく動くわよ。飲みながらいくわ。マユミ、モスコミュールにサイドカー。作っておいて」
「グイグイ飲んで、グイグイやるわよ」
香織ったら、入れたまま動かしながら、覆いかぶさって、口移しで、グイグイ飲ませている。否応無く、流し込んでいるわ。自分は飲まず、小林だけに飲ましているのね。小林、もう目が虚ろ。


睡眠薬を入れたカクテル。二人、もうしこたま飲んでいるわ。
ロヒプノール系の睡眠薬よ。
私が不眠症で悩んでいたとき、近所の心療内科、太田クリニックにかかっていたの。睡眠薬をいろいろ経験したわ。そのとき、一番、効いたものよ。でも、睡眠薬は人と相性があるみたいだから、注意しないとね。先生、真面目で難しい人だったけど、身体の関係ができてからはうちとけてくれたわ。睡眠薬についていろいろと教えてもらったの。多少の便宜もはかってもらえるようになったわ。

あたしのアパートで仲良くいちゃついている香織と翔太に無性に腹が立って、何も言わずに二人を実験台にしたのよ。二人とも、今夜の半分の量で、熟睡しちゃったわ。丸一日、素っ裸でマグロみたいに寝ていたわ。香織なんか、グァ~オ~、グァ~オ~、信じられないくらい下品なイビキををかき、ブッファ~、大きなおならまでかますのよ。翔太も、ガァア~、ガァア~、イビキをかきながら涎タラタラ。普段、気取っている二人の隠された真実を見て笑っちゃったわよ。でも、あたし、ここはチャンスとばかり、二人の間に割り込み、香織に尻を向け蹴飛ばし、翔太に抱きついて寝ていたのよ。涎も舐めてあげたのよ。ついでに実はオチンチンも舐めてあげたんだ。なんか日頃の鬱憤が少しだけ晴らせたわ。
あたしって、嫌な女でしょ。ウフフ。
もう永遠に起きないんじゃないかと心配になった頃、やっと眼を覚ましたわ。
「ああ~、よく寝たわ」
「腹減った。マユミ、なんか作ってくれよ」
何、言ってやがんでえ、と思ったけど、にこやかに笑って、
「インスタントラーメンでよければ、すぐ作るわ」
「食べられればなんでもいい」
「それより、お前らのしどけない格好、見ろよ。しっかり写真に撮っておいたからな」
「どうするんだ? マユミ」
「お前ら、出世することがあったら、これで脅迫するんよ」
二人とも、2、3日、頭が痛いって、ボヤいていた。とにかく実験は大成功だったのよ。


もちろん、薬が効かなかったときのため、小林の頭を打ち砕く、撲殺用のダンベル。小林の喉を掻き切る刺身包丁。しっかり用意してあるわよ。でも、部屋を汚してしまう。使いたくないな。
もう30分もすれば、二人とも意識がなくなるわ。小林、コカインやヘロインの知識はあるようだけど、睡眠薬については、素人ね。
香織、最後の仕上げに細紐で小林の首を締めると言っていたけど、この状態じゃ、無理だな。


殺人が不始末に終わったときでも、香織がアメリカに旅立つ準備だけはしておいた。小林殺害は、香織の海外脱出への餞別でもあるんだから。
成田空港に荷物は送ってあるわ。代々木の駅のコインロッカーにパスポートとチケットと着ていく衣類の入った手提げ袋も入れてある。
小林が起きてピンピンしていても、買い物に行く振りをして出かける手はずだった。でも、それも杞憂にすぎなかったわ。小林は爆睡しているもの。というより、薬が効き過ぎて昏睡状態にあるわ。


意識の無い小林の手と足に,小林が買ってきた手錠をかけたの。まさか自分にかけられるとは夢にも思わなかったろうな。頑丈で十分使い物になるんだけれど、念のため、さらに針金で固く固く縛ってあるわ。かなり痛い筈なのにピクリとも動かない。
喉を掻き切るのも細紐で窒息死させるのも造作もないことよ。もうあわてる必要は何もない。


翔太が香織を迎えにきたわ。
1泊予約済みの成田のホテルまでレンタカーで送ってもらうのよ。
香織、激しく揺り動かしても、眼を覚まさないの。死んでしまったんじゃないかと心配になっちゃうわ。お前、小林の首に細紐を巻きつけて息の根を止めるんだったろ。
「おい、香織、起きろよ。お前、これから、翔太と成田に行くんだ」

頬を平手で思いっきり3発たたく。やっと、薄目が開いたわ。
「ああ、マユミ。私、小林の首を締めなければ」
「何、言ってるの。もう、やったろ」
「あれ、そうだっけ。もう殺したのか、覚えていないわ」
「薬が効き過ぎて、全部、忘れてしまったんだ。よくあることよ」
「小林、息、もうしていないよ。もう、すべて終わったわ。ご苦労さん。さあ、翔太と一緒に成田に行くんだ」
「わかった。マユミ、有難うね」
「後のことは心配しなくていいからね」
睡眠薬と酒で意識朦朧とした香織、ふらふらで翔太に連れられて出て行く。


翔太が戻ってくるのは、2時間後。それまでは、私の作品制作に没頭ね。
手足の自由が全くきかない小林。あたしが自由にをいたぶるわ。ワクワクしてくる。
あたし、究極のサディストでもあるのよ。


小林、大イビキをかいて寝ているわ。横っ面を張っても、ピクリとも反応しないの。翔太が帰って来るまでに完全に息の根を止め、死体にしておかなければならないのよね。
「小林、てめえ、起きろ」
顔を拳で殴っても、反応がない。
顔面を思いっきり靴先で蹴り飛ばす。鼻血は出たのに、意識は戻らない。
このまま、首を絞めるしかないのか。
香織とのセックスの悦楽の感情を抱いたまま死んでいくなんて、あたし、絶対に許せないわ。なんとしても意識を取り戻してやりたい。
電気の裸線をあててやろうか。アイロンで身体を焼いてやろうか。身体の一部を切り取ってやろうか。手や脚を切り取ったら、出血多量で後始末が大変ね。手の指、足の指を切り落とすのも、耳か鼻を削ぎ落とすのもつまらないな。
小林が意識を取り戻したら、一番傷つく、落ち込む方法を考え巡らしたの。
そうね。安部定さんを思い出したわ。さっき、ギンギンに怒張したチンポコで、嬉嬉として香織にからんでいた、あの得意気な紅潮した顔の小林がどうしても癪に障るの。そそり立っていた男の象徴、男の威厳を切り取ってやる。
溜飲が下がるわよ。意識を取り戻したら、その象徴と威厳の残骸を眼の前にブラブラさせてやるんだ。小林、きっと、ズタズタに傷つくわ。
絶命する前の一瞬でいいわ。あたしの気持ちが納得するのよ。
裁ちハサミで、小さくしぼんだチンポコを持ち上げて、ばっさりやったわ。すっごい爽快感。うっとりして時間が止まったように感じたわ。あたし、自分で自分が時々怖くなるの。
出血量は多くなかったわ。血は股の下に洗面器を置いて貯めておいたわ。

「フ~、ウッ~、痛い。なんだ、身体が動かない」
「あら、小林さん、お目覚め」
「マユミか。苦しい。助けてくれい」
「あたし、お前を助ける義務なんか、ないな」
「・・・・・」
「小林、この汚い肉片、何か、わかるか」
「・・・・・」
「これまで女を食いものにしてきた卑劣なお前に、マユミが制裁をくだしたで」
「・・・・・」
「これ、今、切り取ったお前のチンポコなんだ。お前。もう、オカマだぜ」
「・・・・・」
「お前の首を絞めようかとも思ったが、そんな普通のやり方じゃあ、アーティストとしてのプライドが許さないの」
「・・・・・」
「お前から切り取ったものは、お前に返したるで」
「オラ、オラ、オラ、口を大きく開けよ。喉の奥に詰め込んだる」
「ウッ、グッ、グッ」
「次に、チンポコから出た血も飲みな」
「オエッ、オエッ、グエッ」
「もったいない。吐き出すなよ。でも、窒息は時間の問題だな」
「グッ、グッ、ウッ」
「じゃあな」
あたしって、猟奇的な女なのかなあ。違うわよね。ちょっと凝り性なだけよ。芸術家として、常人と感覚が違うのは当然のことよ。でも、自分で自分が、時々嫌になるの。
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# by tsado15 | 2013-06-22 17:39 | 翔太・暗中模索・
               ・・・・・・・・★7・・・・・・・・
成田のホテルの一室。
「香織、頭の調子はどうだ?」
「まだ少しボゥーとするけど、一晩、眠れば大丈夫よ」

カーテンを開けると、夜の帳が降りた中、飛行機の発着の様子が遠望される。香織の腰に手をやって、しばらく眺め入る。胸が熱くなる。
「香織、俺、もう帰るからな。しばらく、会えないな。アメリカで思いっきり夢を追いかけろよ」
「翔太、有難う。翔太も、気持ちの迷い、早く振り切って、写真に戻れるといいね」
向きを変えてじっと見つめあう翔太と香織。今までの長い付き合いの凝縮した思いが突き上げてくる。瞳の奥が潤んでくる。つらい感情を振り払うようにひしと抱き合い、長い長いキス。
そっと唇を離す。
「香織、パスポート、航空券、現金など必要なものは枕元のバッグの中に入っている」
「わかった」
「明日の朝のモーニング・コールも頼んでおいた」
「わかった」

「小林は死んだの?」
「俺にもよくわからない。マユミは死んだと言っている。後始末は俺とマユミでつける。もう小林のことは忘れろ。未来のこと、アメリカでのことだけを考えろ」
「わかった」
「熱いシャワーに入って、ぐっすりお休み。じゃあな」
翔太が部屋から出ていくと、こらえていた涙が溢れ出す。香織、声を上げて号泣。


部屋の中は香織のいた頃と同じく、綺麗になったわ。小林が生きていたときは、ロックをガンガン流していたけれど、今はクラシックのモーツァルトよ。心落ち着くわ。
違っているのは、ベッドに裸の小林が転がっていることだけ。
でも、気になるの。小林が突然動き出すんじゃないかと。こういうの、犯罪者心理というのかしら。あたしも、まだまだよね。
生きているのか、何を考えているのか、探ろうとして、小林の目を覗いたの。瞳が濁っていたわ。もう何も見ていないのね。首筋に手をやっても温かみが伝わってこない。死後硬直が始まり出したようね。死斑も出てきているわ。
小林、本当にお陀仏になったんだ。ざまあみろってんだ。完全な死体よね。自分で殺しておいて、遺体なんて言葉、そらぞらしくて、使えないわよね。殺人者には、死者の尊厳も糞もないのよ。
チャイムが鳴ったわ。翔太が戻ってきたみたい。

「香織、どうだった?」
「思ったより意識ははっきりしていた。朝まで眠れば大丈夫だろう」
「小林の死体。もう死後硬直が始まってるわ」
「俺、生きている人間には結構強いと思うけど、死んだ人間はからっきし駄目なんだ。身体はでかいけど、心は繊細なんだ」
「この死体の処理、私達でやるしかないわよね。それを、香織の新しい人生に向けてのお祝いの贈り物にしよう。翔太はどう? 厭なら私一人でやるわ」
「嫌なことなどないさ。香織を傷つけた謝罪の意味も込めて、喜んで手伝うよ。でも、俺、一人で死体と向き合うなんてこと、とてもできそうにない。あんまり役に立たないと思う。ごめんな、意気地なしで」
「まかしとけってんだ。あたし一人ではできないようなことだけ、手伝ってもらうようにするから」
「わかった。俺にできることなら、何でも手伝う。指示してくれ」
「でも、ここで死体を処理するのは危険すぎるわ。持ち主の爺さんもいつ戻ってくるかもわからないし、小林の仲間が来ないとも限らない。まずは、千葉の鴨川の山中にある、家具職人の元彼と一緒に借りていたアトリエ兼家具工房に死体を移すわ。そこで死体をバラバラにして捨てようと思うんだ。家具製作の工具一式が揃っているし。山の中の一軒家だからどんなに音を立てても構わないし。海も近いから死体を破棄する場所にも困らないわ」
「元彼はどうしたんだ?」
「私が重すぎるんだって。大好きだったのにい。他の女と私から逃げて、二度と戻ってこないの。福井の田舎で結婚しちゃったそうよ。俺のものは全部、処分してくれと友達を通して連絡があったわ。あたし、棄てられちゃったみたいなの。だから、今度は私が男を棄てる番。小林をじっくり楽しんで棄ててやらなくちゃ。男に対する復讐よ」
「マユミ、おまえって本当に強くて怖い女だなあ」
「翔太には、弱くて、すっごく優しいでしょ」
「・・・・・」
「ねえ、ねえ、翔太、あたしって、重すぎる?」
「ウ~ン、そういう傾向、ないでもないな」
「何よ。その奥歯にものの挟まったような言い方。翔太と私は死体遺棄の共犯になるのよ。特別の関係になるんだぞ」
「そうだよな」
「だから、近場に良い男がいなくて、あたしがどうしてもセックスがやりたくて気が狂いそうになったときくらい、駆けつけて協力するんだぞ」
「わかったよ。確かに少し重いかも・・・」

「一番、危険なのは、工房に死体を運ぶまでの道中よね。腐敗が始まる前に運んでしまいたいわ。安全運転で、ポリスに捕まらないように慎重に行ってね」
「まかしとけ。低温冷凍車のレンタカー、朝一番で借りてくる。俺、食肉処理工場でバイトやったとき、何度も借りているから、勝手、知っているんだ。それで、腐敗の心配は全くなくなるな」
「さすが。翔太。じゃあ、冷凍車が来るまでに、あたし、部屋をもう一度綺麗に掃除して、ここに小林のいた痕跡をすべて消しておく。それから、車まで運び出せるよう、大型の段ボール、もらってきて、ブツを詰め込んでおくわ」
「少し重いけど、それさえ眼をつぶれば、頼りになるんだよな・・・」
「何か、言った?」
「いや、別に」



何よ、翔太ったら、曲をショパンの「別れの曲」にかえて、深刻な顔して、頬杖をついているの。これではいけないと思ったわ。小林なんかのことで、気を落とすことなんかないんだわ。あたし、腹が立ったから、山口百恵の「いい日旅立ち」に変えてやったの。翔太、百恵ちゃんファンだったってこと、香織から聞いていたの。
「翔太、深刻ぶんなよ。私達、今日を境に、新しい未来を求めて、旅立たなければならないんだぜ。暗くならずにパッと行こうぜ、パッと」
「そうだよな。イジイジしてちゃ、いけないよな」
「朝までもう何もやることないわよね。翔太、お願いがあるの」
「なんだ?」
「今、あたし、すっごく、ハイの状態にあるの。セックスの欲求が最高レベルに高まっているみたい。ここであたしを抱いてくれない?」
軽いノリで言ったつもりだったんだけれども、あたしの表情に鬼気迫るものがあったと思う。でも欲望は欲望よね。あたしの性格が、異常に偏執的に思われても仕方がないと思ったわ。とにかく、あたし、そのとき、翔太に抱かれたかったの。いや、犯されたかったの。あたしって、燃え始めたら我慢できない女なの。

小林を殺した罪悪感などこれっぽっちないと強がっていたのに、そうでもなかったみたい。正確に言うと罪悪感ではないけど、あたしの心の深層に眠っている、おぞましいどす黒い何かに苛まれていたみたい。
翔太に激しく突き抜かれ、滅茶苦茶に掻きまわされることで、あたしの心、わずかでも癒せたらと思ったのかもしれないわ。あたしって、性格が一筋縄じゃないの。

「死体の隣りで、セックスするんか。俺、できないよ」
「何でも手伝うって、言ったじゃない。最初の指示よ」
「けどな。気持ちが固まってしまっているんだ。無理だよ」
「翔太! やれば、できる! やってみる前から、できないなんて考えるな!」
「そうなんだよな」

「セックスしないと、テンションが下がって、この後の死体処理作業の能率が眼に見えて落ちてしまうわ。それだけは確実。翔太、あたしに入れて。こねくり回してよ。お願い!」
「できれば、やるよ。でも、恐怖からチンポコも縮こまっているんよ。足もつっているみたいだし」
「まかしとけって。あたし、大きくしてみせるわ」

確信なんかないのに大きく出ちゃった。翔太のような子には自信をみせないとね。あたし、まず足のマッサージを丹念に丹念にしたわ。それから、翔太の股間に顔を埋めて、丁寧に丁寧に舌を使ったの。チンポコはもちろんのこと、陰嚢から股の付け根、肛門の周りまで30分もかけて舐め続けたかな。あたしの心が通じたのかしら。次第に翔太の緊張がほぐれてきているのがわかったわ。

「翔太、大きくなってきたわよ」
「俺、なんだか自信が沸いてきた」

「翔太、もう十分に硬いわよ」
「不思議なものだ。チンポコ、大きくなったら、気持ちまでゆとりが出てきたよ。マユミ、入れるぞ!」
「待ってたぞ。翔太、やっぱり、お前、やればできる男なのよ。好き。好き。大好き!」

「こんなチャンス、めったにないわ。こんな素敵な環境で、セックスできるなんて、あたしって、最高の幸せ者だわ」
「ったく。芸術家の考えることって、俺には理解できないな」

極限状況でのセックスというのかな。とにかく、あたし、燃えに燃えたわ。
翔太も、ふっきれたみたい。気が狂ったように、あたしを激しく攻め続けてきたの。
極真の試合でもしてるようだった。殺気を感じたわ。気合を感じたわ
「いいっ。いいっ。いいわっ! 凄いっ! 凄いっ! 凄いっ! 殺してえ! 殺してえ!」
「ウォッ、ウォッ、ウォー。キェッ、キェッ、キェー。出たぁ!」
あたし、吼え続けていたみたい。翔太も大声を出して、射精したわ。
「何よ、翔太。一人だけ先にいくなんて、ひどいわ」
と、言いつつも、中に出された後、あたし、ゥワーン、ゥワーン、泣きわめいていたみたい。何が何だかわからなかったわ。感動したのよね、きっと。

「あたし、知らず知らずのうちに、心がかじかんでいたみたい。でも、翔太のチンポコに気合を入れられて、解き放たれたわ。裂帛の気合っていうのかな。有難う、翔太」
「マユミの中で無心に動かしながら、暗黒の世界を彷徨い続けていた。でも、放射と同時に一筋の閃光が走ったんだ。目の前が開けたような。精神の飛躍を感じとったような。やればできると身体が覚えこんだようだ。サンキュー、マユミ」
「そうさ。翔太は、能力があるのよ。自信を持ちさえすれば、できるのよ」
「マユミ、お前って、人を乗せるのがうまいな」
「翔太、それって、二つの意味、かけてる?」
「そんなわけないだろ。バ~カ」

後ろから入れられたまま、お腹を持たれ持ち上げられてグルグル振り回されたわ。首にぶら下がってままブランコみたいに出し入れもしたわ。自由な精神を得た素っ裸の二人。朝まで、もう乱痴気騒ぎよ。
「マユミ、最高だった。人生で忘れられないセックスの一つになった」
「あたしも、極上のセックスを味わったわ。ここを出発点にして、何かできそうな気がしてきているの」

「俺、乗り超えられそうもない現実の壁もにぶちあたったとき、死体の横でセックスしたことを思い出すよ」
「俺。プレッシャーに弱く、持っている力が出し切れなかったんだ。このセックスで、克服のヒントをもらったような気がする」
「極真でも実力があるのに、試合になると弱かった。香織の兄貴と正反対だった」
壁にかけた時計が午前4時半をさしていたわ。
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# by tsado15 | 2013-06-22 17:37 | 翔太・暗中模索・